そしてまた、写真嫌いのひとが誕生したのかも知れない。
「写真を撮られるのは苦手です。」という話しはよく耳にする。かくいう僕自身も苦手であり、ましてポーズをとらなければならないというその状況を想像しただけで、目の前が白く霞む。とはいえ因果なもので、そんな自分がされたら嫌なことを強要しているのが、写真を撮る僕の仕事だったりする。
自分が撮られるのは嫌いだが、撮るのは好きである。(都合のいい話だ)そして、写される人にあれこれ注文しては、「もういいんじゃないでしょうか?」と言われ、「すいません、あと少し、もう少し」と撮影を続ける。そして、色々な表情を集めて行く。そもそも文脈にあった表情を使わなければならないので、こちらで単純に「いい写真が撮れたのでこの辺で。」といって切り上げられない事情もあるにはあるのである。
その作業を積み上げた結果、もっともその人の風貌が写ったものが、採用されると「あーよかった」とほっとする。
しかし、なかなか願った通りにはいかない。
少し前、とある会社の社長のインタビューを撮影する機会があった。株主に業績を説明するものに使うという。一緒に同行したディレクター曰く、「今期の業績は良くなかったので、あまり派手な表情はNG
でお願い」という指示。いわれた通り撮影するのだが、柔和なほほえみが印象的な方だった。写真的にも、人間的にも、『柔和なほほえみ』の表情のほうがいいのではないかと思うのだが、やはりこちらに選択の余地がないので、あらかじめ準備された台本通りの表情をさがして撮影した。撮影された当人からしてみれば、冴えない表情の写真が使われてさぞがっかりしたと思う。
そしてまた、写真嫌いのひとが誕生したのかも知れない。
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